移動に関する様々なサービス ~JTB ジェロンタクシー

 

タクシーやバスとは違う移動手段が、様々な事業者から提案され実施されている。これら新しい移動手段について考察してみる。

はじめは、旅行会社の株式会社JTB九州によるジェロンタクシーを取り上げる。

ジェロンタクシーは、簡単に言えばタクシーの1か月定期利用である。タクシーの定期券というものは、発想自体は目新しさは無いが、実はこれまでにはあまり事例がない。北九州市のタクシー事業者が、乗り放題ではないが条件付きのタクシーの定期利用に類似したサービスを提供している。しかし、電車のような定期利用、つまり昇降場所が決まっていてその区間であれば一月乗り放題であるというものはタクシーにはなかった。ありそうでなかった、新しいサービスである。

これは70歳以上限定の高齢者向けのサービスである。自宅と利用者が好きな2地点(例えば医者とショッピングセンター)を登録し、この自宅を含めた3地点間を自由に行き来することができる。利用者にとって定額放題であるから、まさに運転手付きの車両がそばに控えているようなものである。ドアツードアの移動が可能となるため、高齢者にとっても、ストレスを感じない便利な乗り物である。

利用料金は、月19,500円から42,000円と決して定額ではない。月当りの料金は自宅から目的地までのタクシー料金によって決められる。例えば、自宅から両目的地までのタクシー運賃が670円~720円の場合は、19,500円となる。距離にして片道1.5km程度だろう。

定期利用である以上、利用者はヘビーユーザーであるのは当然である。月当りの外出頻度が少なければ、その都度タクシー料金を支払った方が経済的である。

では、どのあたりが目安になるのだろう。

簡単に計算してみよう。タクシー運賃を700円とすると、19,500円わる700円で、およそ28回、つまり14往復である。単純に月に半分以上は外出する人にとってはお得である。毎日外出する場合は、タクシーを半額で利用するのと同じであるから、とても経済的である。

このように、タクシー料金と比較してこのサービスの利用料金を検討しても、決して高いものではない。とはいいながらも、多くの利用者はやはり高いものであると感じるだろう。

多くの人にとって、移動に対する対価はバスを基準にしている。自宅から片道1.5km程度の移動であれば、100円か200円である。タクシー利用を考慮しても、その倍ぐらいが適正であると感じているのではないだろうか。(地域によっては、高齢者の市バス利用料金は無料のところもある。それを考えると、料金を取ること自体に不満を感じている高齢者も少なくないであろう)

JTB九州によるこのサービスは、昨年の夏頃より始まったがそれほどの広がりを見せていない。タクシーの定期券という発想は、高齢化社会では必要なサービスであると思うが、全国的な広がりを見せていない大きな理由は、月当りの利用料金が高額であるからであろう。

ところで、このタクシーの定期利用がどうして旅行業者の企画旅行としてサービスがおこなわれているのであろうか。

これは道路運送法と旅行業法による。タクシー運賃は道路運送法により決まっている。各地域の運輸局の認可運賃がそれである。そのため、このジェロンタクシーというサービスでは、ヘビーユーザーの場合は逆ザヤが発生する。この逆ザヤをJTBが負担する事で成立している。一方で、旅行業者が提供する企画旅行の値段は自由に値段を付けることができる。そのため、旅行会社が逆ザヤを担保する覚悟があれば、企画旅行としてサービスを提供することが可能となる。収支の面を考えた場合、単体ではビジネスモデルとして成立しないと思う。さらに大きな枠組みがあって、この赤字を埋めることができるようなモデルであればもちろん可能であろうが、このジェロンタクシーには、そのような枠組みは無いように感じる。タクシーの定期運行サービスは、旅行業者ではなくタクシー事業者によって行われるのが本来である。それができない法規制は見直しの余地があると思う。

タクシーの定期運行サービスは、利用料金の工夫さえできれば、少子高齢化社会では大きな需要があり、買い物弱者問題や高齢者の交通事故の減少のための解決の一助となるであろう。